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感想割

感想のご紹介

『増える部屋』神奈川公演では、1000文字以上の公開可能な感想を寄せてくださった方に割引を行う感想割」の取り組みを行いました。

こちらのページでは、その中からいただいた自由な感想をご紹介します。

掲載件数
6
最終更新
2025/12/06

2025.11.21(金)19:30回

これまで沢山の演劇を観劇してきましたが、観劇中、初めての感覚になる演劇でした。 今までで味わったことの無い、ふわふわとしていて、でも心にズシンと来るものもあって、終始ずっと不思議な気持ちで観劇をしていました。 また、対比になるようなものが多いように、感じており、少ないキャストに対し、かなり多い舞台美術。 メインの登場人物である相川は、「タワマンに住む」というとても大きな夢を持ちつつも、バレたら人生どん底な、不正事実の書類を隠すという闇を抱えている対比。 三島は、好きな職につき、真面目に取り組み、傍から見れば羨ましい、憧れると思われるものの、実際にはやりたい事や伝えたいことが上手く伝わらずに燻っている状態で、世間からの見え方と実際の自分とのギャップよる対比。 そんな2人も、全く正反対な性格をしていてここでも対比を感じました。 でもこの2人は、別方向だとしても何かしら悩んでいる、ことに関しては同じなわけで。 それを少しずつ解消していくのに、2人とはまた違う対比のような人達が、各々にアクセントを加えていく。 数字と現状の結果に固められ、不正事実を隠そうとするまでの相川には、自由奔放ですが、大人になるにつれ、正しい取捨選択をし、柔軟に対応できるようになってゆく知り合いの佐々木。 好きなことをしていても、上手く伝わらず燻っている三島には、これでは売れないと予め分かっていながらも、吹っ切れて好きなことを自由にやっている写真家。 等など、対比になるような、これまでは混ざり合わなかった、お互い理解できないようなもの同士が、同じ空間で少しずつ溶け合っていく、そんな不思議な空間が凄く刺激的で、とても面白かったです。 私自身も、三島のように、上手く言葉や形に表すことが出来ず、心の中でイライラが募りしんどい思いをした経験や、過去の職場でほぼアウトゾーンな事を、誤魔化し誤魔化しやっていくのを見たり聞いたりして、理解ができないな、と思うことなどがあり、 三島に感情移入をすることが多かったですが、相川の言う、「不正事実はあれど、周りはすごくいい人ばかりで、ここで色んなことを学ばせてもらって、」というような気持ちも、過去の職場での体験上、給料高いし、自由度も高いしな、と無理やり飲み込もうとしてしまう自分もいた事があった為、相川の感情や焦りも良くわかるな、と思う部分もあり、人間って、同時に色んな感情になれるんだと不思議で楽しい気持ちになりました。 他人に見せる顔と自分だけの顔、または己から出るものと、本来思っていることに関してのギャップ、うくたの黄色い椅子のように、実際こうしようとしていたものの、過去の背景上、今はこうなっている。など世の中には見えない対比の部分を実は持っているものが多く、表面上のみで考えるのはあまりにも勿体ないし、失礼だし、たくさんの可能性があることを常に思い出しながら考えていくことが必要なのかもしれないな、と改めて意識について考えさせられました。
前作から引き続き、メルヘンでファンタジーな場所で、何故か親近感があって共感する部分も多いようなキャラクターたちのリアルでシリアスな部分が存分に描かれている山本さんの脚本と、 その世界観にすぐ没入できるような、でもどこか観客の想像力に委ねる余裕もくれる可愛らしい舞台セット、音響、照明。 そしてその環境で演じられる役者さんの、キャラクターに共感できるようなお芝居が、 本当にいつもお値段以上の素敵な観劇体験をさせてくれて、大好きです。 東京公演、横浜公演と別の方を連れて伺いましたが、両公演ともとても楽しんでもらえていたようで私もとても嬉しいです! 毎公演会場内に入ってすぐ、空間演出にワクワクさせられます。 東京公演では、会場入ってすぐ少し暗い照明やごちゃっと物で溢れた部屋が目に入り、 部屋の色んなモノを見ながら連れと、あの置き方するよねとか、あれ持ってるかもとか、たまに、あそこから(人が)出て来たりするんじゃない?みたいな作品の予想をしながら開演を待つ時間が凄いあ~観劇体験…してるわぁ…と謎に初っ端からじわじわ嬉しくなったりしたのですが 横浜公演ではフォトスポット!!超可愛い…!そのままとっても可愛いし、自分単体や友人ととっても記念になるし楽しかったです! そして会場内は、東京公演と打って変わってモノが…!ない…! 代わりに沢山の柄や質感の違う布で溢れていて、舞台の奥行きを生かしつつ、東京公演とはまた違った作品の想像や予想をさせるような空間で、空間自体の楽しさも感じつつ 東京公演を観に行ったからこそのワクワクを体験出来ました。 公演始まる前の事からこんだけ書いてしまいましたが、作品始まる前からこれだけのことをこちらに提供してくれて、作品の世界に入る準備を整えてくれていたりするのって本当に大事だなと思うし、実際に来た我々しか体験できないこのわくわくはまさに演劇体験だなと思います。 本編を~語るだけの語彙や話をまとめるスキルはないのですが頑張ります。 ここから日本語拙くなっちゃうのですがマジでごめんなさい。 横浜公演…!いい…! あの布で部屋の往来をみせるの、脚本のテンポ感にもあっていて、東京公演の様なくぐったり登ったりで移動するのも面白かったけど、このシェアハウスのごちゃっと感というか、密集感?もはや部屋の区切りは?みたいなあの不思議ハウスの移動が布の切り替えで観客が勝手に色々補完しつつ違和感とか、構造わからない、、、とか思うことなく作品に集中できた! あと布ならではのプロジェクターの映像!いい!作中三島と相川の話を聞いているとうくた像って生きるの大変そうだし、周りもうくたのことは好きだけど、一生懸命が空回りしてそうな、うくた自身の不器用(不器用って言葉でまとめていいものかわからないけど…)さに苛立ちを覚えたり、覚えられたりしてるんだろうなぁって思う気まずさを持ったりしてそうな感じがして、なんか特に横浜公演では凄い暗い人物な印象があるけど あの不安定な布に映し出されたぐにゃぐにゃで明るくて優しい楽し気な歌ビデオをみてると凄い励まされる。 歌ビデオの作品自体、うくたがこのシェアハウスに安心しきっているのがわかるし、歌ビデオを通して自分と向き合ってるんだなあとか思って謎人物うくたへの想像がより膨らんで相川や三島のセリフの観客側の解像度?も高くなるし、 あの映像の不安定さに完璧じゃなくていいんだよよ言ってもらえているような優しさをかんじる。 きたさんの話し方や表情、間とかから来る雰囲気がそれを最大限に引き出しているのは言うまでもなく! とにかくきたさん演じるうくたが愛らしくてとっても好き。私の大好きな友人たちに大好きな北さんの魅力がうくた通して最大限詰まっている歌ビデオ見てもらえてなんか私まで嬉しい(笑) キャラクターでいうと相川は出来るだけ早く距離置きたいタイプだなあとか、なんか面倒くさいなあこの人って言う感じがすんごい出てて、そう、、、いるいる、、、こういう人って感じで解像度高くてとても良かった。 相川なりに自分の世間社会への立ち位置とか人間関係、しかも凄い感情の入った人間関係(?)うーんなんかわかる部分もあって、特に焦りにフォーカスされてるキャラだから、その色んな人物に向けたそれぞれの焦り…?とか苛立ち…?とかを共感したりかんじたりするなのは勿論、なんか細かい部分、、、いるいるこういう人って思うし、何か、、、やっぱり共感しちゃう部分もあったりする。。ちょっとマウントとる気質あったりね(笑)なんか精一杯生きてる感じがして憎めない。 散々言っておいて褒め言葉に聴こえないかもしれませんが、三役を行ったり来たりしてるのに相川に対して違和感がなくて、すぐあ、この人は相川だって気づけたから作品に凄い集中できた。 勿論三島の役者さんもそうで、こんだけ二人で色んな役柄をテンポよく往来してて、あまり衣装の変化もない中、すんなり役の認識ができた。だからこそ、あの布を使ったテンポのいい場面展開ができたんだなあと改めて思ったり。。 相川に対して共感したと何回もいってしまったけど、三島の方が共感した回数は多かった。し、もしかしたら共感されるようなキャラクターにしてたのかなぁというくらい、の親近感で、やりたい事と仕事のバランス、、、というかやりたい!ってことはあるのに自分のスキル?が足りないせいで出来ない、実現しないもどかしさとか、うくたとか相川に対するそれぞれへのもやもやとか疑問とかそれを理解しようとして自分に置き換えて考えて理解出来たり出来なかったりすることでさらに色んな気持ちがあふれてくるところ…? 横浜公演に連れて行った連れも三島の方が共感すること多かったといっていたし、この作品に入る為に重要なキャラの役割を果たしていたというのはすごく上から言葉で違う気がするけどそんなことを感じたり、、、 住人達も可愛くてよかった~このなんか完璧じゃない住人たちだからうくたが自分の居場所はここだってなったんだねって思えるような温かいキャラクターたちだった。わたしもタッパーに入ったマドレーヌほしい 山本さんの人の心に会話ごしなのに、心情描写とかモノローグのセリフがあるわけじゃないのに直接触るような覗くような‥?強め?でシリアスなキャラクターたちに何でこんなにもメルヘンな設定や空間が似合うのかマジで謎。前作の王様のときもそうだったけどどういうバランス? 不思議演劇集団・・・とっても好きです・・。 二公演も行ったのになんかまたあのシェアハウスに行きたいなと思ってしまう。 東京公演横浜公演通して、この作品の色んな顔が見れて楽しかったです。 上手いまとめ方がわからないしあまりないよう触れられてないかもしれないけどそんな感想でした! おとなってむずかしー!
この度は『増える部屋』神奈川公演お疲れ様でした!少しずつ謎解きされていくようなお話で、とても面白く同時にたくさんのことを感じさせられて、感想をまとめるのに時間がかかってしまいましたこと、結局まとまっているのかも分かりませんが、まずお詫び申し上げます。 客入れのときからのなのですが、私自身STスポットにて観劇したのが本作品が初めてだったので他作品との比較とかはできず分からないのですが、客席数がとても少ないことに驚きました!1列目中央のシベリアンハスキーくんのぬいぐるみを抜きにすると13席しかなくて。その小規模な客席、観客のサイドに平台で壁ができてて。個人的に勝手に「ここが〈客席〉って名前の小さなひとつの部屋みたいだな」と感じて楽しかったです。温もりのある狭い空間て安心感があるなと思いました。アナウンスのうくたさんのお声も、すごい優しくてぬくもりというか、何をも許してくれているようでとても好きでした。 美術もとても魅力的でした!布という素材の持つやわらかさ・包容力・変形性の面と、対して空気の温度感や湿度感を遮断・滞留させる閉鎖的な面を感じました。壁にしたり窓にしたり、時には衣装や小道具になったり、付けたり外したり。始終通してそこにいる俳優・言葉、作品にまとわりつくように使い使われていて面白いなと思いました!そして最後の布ではないかたい家具・雑貨が両袖から倒れてくる演出では、1時間布と映像に甘やかされて「分からなさ」を抱えたままでいた肌感覚に正論で平手打ちされたような衝撃がありました。 照明は好きどころしかないのですが、特に映像に切り替わる時の自然な気持ちよさと、部屋全体に上下から当たっていたgoboの使い方が勉強になりました! 音響も素晴らしく、感情の変化を誘導されているプランニングが本当にくせになるなと思います。特にうくたの詩ビデオを三島さんが口に出していたところでふと音が切れて、途切れて初めてさっきまで音が流れていたことに気づき、同時に脅迫や緊張のような心臓がキュッとなる感覚がなくなり我に返らされ、そのことに気づき。演技やセリフの影響ももちろんあるのでしょうが、そこにより乗りやすくしてくれる音の繊細な微調整に感動しました! 西奥さんのパフォーマンスは私にとってはすごく独特で、喋り方や間など全部好きでした!三島さんももちろんなのですが、個人的大好きは佐々木さんです。あけすけで竹を割ったような割り切り具合なのに、どこか、未練ほどじっとりしてないけど、寂しさのような小さなしこりを捨てきれていなそうな良い人物像だなと思いました。 薮田さんのパフォーマンスは観ていて本当に気持ちいいくらいもどかしくて好きでした!この部屋を詰め込んで体現しているくらいのぐちゃぐちゃで、常にキャパギリギリで生きている人すぎて感情がつられて泣いてしまいました。相川さんはよくコンサル・タワマンの話をしますが、彼の口には馴染んで自然と出ている言葉のようなのに、どうも彼自身から出てきた言葉のような気がしないなと感じました。例えばそれは会社の出来る同僚の言葉をそのまま言っているようで。相川さんはきっとコンサルの営業なんて向いてなくて、だからこそ優秀な社会人にこだわるのかなとか。でもそもそも優秀ってなんだろうとか、向いてるってなんだろうとか、だんだん観ているこっちも分からなくなってしまって。 何が良いとか悪いとか、そもそも正解なんてあるのかとか。そんな時に「分からないけど理解はできるもの」が人とか状況とかいっぱいあると、豊かなのかな、とか、思いました。 とっても面白い演劇を観劇させていただきありがとうございました!!

2025.11.22(土)14:00回

『増える部屋』は、現代演劇らしい難解さを含みつつも、日常生活ではなかなか触れることのない感情や視点に出会わせてくれる作品でした。 多忙で効率性を求められる日々に慣れてしまうと、人間の奥行きや背景に思いを馳せる機会はつい失われがちです。 しかし、この作品が描く“迷いながら生きる大人たち”の姿を前にして、改めて人にはそれぞれ長い歴史があり、 その積み重ねのうえに現在があるのだと実感しました。 劇中のシェアハウスという空間は、物理的には複雑でありながらも、人間関係の曖昧さや距離感、触れられそうで触れ合わないもどかしさを象徴しているように見えました。 同じ場所に住んでいても完全には交わらず、しかしどこかで影響を及ぼし合っている。 その姿は、大人になり、それぞれが異なる価値観と生活リズムを持つようになった現実世界の縮図のようでもあります。 また、散らかった部屋で探し物を続ける2人の行為は、単なる“物探し”以上の意味を持っているように感じました。 不要に見える荷物も、無数のアロハシャツも、水槽も段ボールも——すべてがその人物の軌跡であり、選択の結果であり、過去の迷いや希望そのものです。 人の理解には時間がかかり、効率的に片づけることができない領域が確かに存在するのだと、静かに語りかけられているようでした。 多様性が重視される現代ではありますが、その価値観が広く認められるようになるまでには多くの「生きづらさ」が存在し、居場所を探し続けてきた人も少なくありません。 インターネットの普及により、同じ境遇の人同士が出会い、思いをさらけ出せる場所は増えました。 さらに今ではAIが個人の思いに寄り添い、否定せずに受け止め、前向きな一歩を支えてくれる存在にもなっています。 かつては長い時間をかけて“自分の居場所”を探すしかなかった迷いの過程が、技術の進歩によって少しずつ和らげられているとも感じました。 20年後には、より多様な生き方が自然と受け入れられ、人との違いに悩む時間も今より少なくなっているかもしれません。 一方で、自分自身は相手の歴史に思いを馳せる余裕を持ち続けたいと思います。 まずは身近な両親や旧友、現在関わる人々との関係から、丁寧に理解を深めていくことを意識したいと感じました。 【演出】 カーテンを用いた空間の使い方が非常に印象的で、不思議な間取りが次々と立ち上がるような感覚をもたらしていました。 映像の挿入も、俳優2人のテンポを良い意味で区切り、世界観に奥行きを与えていたと感じます。 【俳優】 言葉が淀みなく聞き取りやすく、動作のタイミングも極めて緻密で、相当な稽古を積まれていることが伝わりました。 カーテン操作や照明、映像との連携など、舞台裏まで含めた総合的な調和が見事でした。 【観劇料】 当日飛び込みでチケットを購入しましたが、受付で「感想提出で割引」と提案いただき、半額で購入しました。 後にメールを受け取った際、1000文字以上とあったので驚きましたが。。。 一方で、作品を振り返り、自分なりに意味づけて咀嚼する良い機会となりました。 難解さゆえに、書く過程で理解が深まり、観劇体験がより豊かになったと感じています。

2025.11.23(日)14:00回

「増える部屋」は今回初めて拝見したのですが、とにかく演出の技がすごい!2人芝居×アパート一棟というある意味制約ともいえる設定の中で、役者がメインの訪問者の役に加えて住人の役を入れ替わり立ち替わり演じてお話を紡いでいくのが観ていて楽しかったです。 同じ人が演じている役同士は当然会えないわけなんですが、あの手この手で終始3人以上出てこないようになっているのも楽しいポイントでしょうか。 「昔から仲が悪い」という理由づけが1番楽しかったです! 演出のおもしろさを1番感じたのは、部屋を訪問していくたびに吊られている布を取っていくところです。 演劇なので当然舞台はひとつしかないのですが、無数の大きな布が吊ってあって部屋を進むたびにそれをひとつずつ取っていくことで、 視覚的に「ここはさっきの場所とは違う」と理解できるのが「一本取られた!」って思うくらい膝を打つ演出でした。 取った布は地面に落として部屋の雑多さを増していき、布が減っていくのでうくたの動画が映る場所も毎回変わるところも素敵でした。 プロジェクター操作の方すごいですね! 布を使い切ったあとも照明を使ってうまくシーンの差別化を図っていて、それがまたとても綺麗で…。 窓のネタが入ったサスはたったひとつだけの明かりですが、非常に効果的な演出だったと思います。 物語の内容に関しては、Qunoの皆様が、具体的なテーマと感情移入できるような登場人物をもって物語を追体験させていくとか、 抽象的な広がりをもって観客に届けていくとか、どのようなスタンスをもっているのかお聞きしてから感想を書くべきだと思いつつ、 あくまで個人的に浮かんだ感想として記させていただきます。 まず、今回は2人芝居で舞台セットも抽象的な表現を用いて作られていると思うので、 最序盤のシーンで「それぞれの登場人物について」「現在の状況」についてもう少し客席に浸透させてもよかったのではないかと思いました。 「どうして2人はここに来て、何が目的だったのか」が最初から最後までしっかりと掴みきれなかったのが悔しいです。 訪問者2人に感情移入させるのではなく、彼らの抱える悩みの方に共感させる、というような作り方だったのでしょうか。 一方で、この作品で観客と一緒に追っていく謎、みたいなものは「うくたの存在」で強力に提示されており、 どうしてもうくたが気になって仕方なくなる作りだったので、最後まで続きが気になるしかけが随所に詰まった魅力的な作品だと感じました。 いつか、「増える部屋」のような無限の広がりを感じさせる素敵な2人芝居をつくってみたいです。 あの日の横浜にはそう思わせるほどの大きなパワーがありました。座組の全ての皆様、素晴らしい作品をありがとうございました!
今年の8月、中目黒で上演された東京公演。 スケジュールの都合で見に行けなかったので神奈川公演に行かせていただきました。 横浜にあるSTスポットは一部工事中だったり、定休のお店があったりと、閑散としているビルの地下にひっそりとあるスタジオ。 人でごった返していた横浜駅からはまるで違う、別世界。 もしかしたらそれも演出の一つなのではないかと思わせるような入り口で、観劇モードにスイッチが入りました。 劇場内に足を踏み入れると、天井からいくつもの布が吊り下がっている。 大きいものから小さいもの、無地の物から派手な柄まで。 見ただけでは何が起こるか分からないワクワク感が始まる前から掻き立てられる。 藤井ちより演出の作品は視覚を楽しませてくれるものも多い。 大劇場はセットを作れるが、小劇場はなかなか難しいものがある。 そんな中でも創意工夫が最大限になされており、見ている観客の想像力で完成させる。それが凄い。 シェアハウスに住む友人の頼みで探し物をしてほしいと頼まれる男女二人。 そのシェアハウスには何人もの住人が住んでおり、その住人達と関わり合いながら探し物をする。 だが依頼主も探し物を頼まれた二人にも、それぞれ抱えているものがあった。探し物は見つかるのか、彼女はどうして依頼したのか、二人は住人たちと、自分たちと、探し物と、依頼主の友人とどう向き合っていくのだろうか。 いくつになっても物は無くすし、探し物はする。ただ見つからない探し物をしていると、そのうち自分は何を探しているのか分からなくなる時がある。 そして全く関係のないものを見つけ、寄り道をする。人生と同じだ。でもそれでいい。それがいい。答えだけが答えじゃない。 探している過程も寄り道して見つけたものも全てが答えであろう。 シェアハウスやってきた男女二人。布に投影される動画。それは依頼主の“うくた”からだった。(この映像をスクリーンではなく、吊るされた布に映す感じがいい。揺らぎがなおいい。この先起こることへの不安なのか好奇心なのか、心の揺らぎのメタファーにも見える。) 中に入ると散らかった家の中。片付けながら家の中を散策すると、住人が。(落ちていた服を畳みながら自分の身に着けて、違う住人に変身。その変わり方は鮮やかだった。ワンアイテムでキャラの変化が見えるのでベースになる格好はもう少しシンプルでもいいなとも思える。) 話が展開していくに連れて、部屋が、住人が変わるに連れて、吊るされた布が減っていき部屋が変わっていく。 最後には大きな一枚の布だけに。(パーテーション代わりの暗幕かと思い、あれも剝がしてくれたらいいなと思っていたら剥がしてくれたので、嬉しかった。) 一部ハプニングなのか演出なのか分からない箇所があったが、それもそれでよかった。 これは夢なのか現実なのか、分からない感じ。(劇場の壁が真っ白だったのでそこに投影するのも面白い。) 最後に出てきたのは大きな白いカーテン。そこにも映像が。その奥には依頼主のうくたが。 そして友人たちは多くの物をかき分けてうくたの元へと進んでいった。最初の映像が再び流れて物語は終わる。 この終わり方はいくつもある分岐の一つなのではないかと思った。 ・今度はあなたがこのものに埋もれたシェアハウスの住人だよ。というホラーテイスト。 ・最後は舞台上からすべての物が無くなりもぬけの殻となった家に訪れた二人が見ていたものは夢なのか現実なのか、はたまた。 ・探し物をしていた友人たちが今度は動画で探し物を依頼する。その探し物はぬいぐるみ。でもそのぬいぐるみは…。 この作品は見ている観客の想像力で完成させる。観ている人が考察し、妄想し、創作し、新たな世界が広がっていくことができる。 想像してできた新たな世界への扉。その先にはまた違う部屋がある。新たな部屋へと、もう足を踏み入れているのかもしれない。 「増える部屋」

※ 原文からHP掲載用に一部改行をして掲載しています。

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